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DATE: 2009/04/19(日)   CATEGORY: コラム
「仕分け」のできる人【産経妙】
最期まで「老いの一喝」に徹してきた上坂冬子さんの「歯切れの良さ」の秘密はどこにあるのだろう。その疑問を上坂さん自身が一昨年11月、大阪での「正論」懇話会で解き明かしている。「これでいいのか 日本」という文字通り「一喝」の講演だった。

上坂さんは、今の日本では迷わなければならない、結論を簡単に下しちゃ困るという部分が、あっさりと割り切られている。反対に「一刀両断」に切らなきゃいけない部分が切られていないと指摘した。そこに一番の問題がある、というのである。

例えば「戦前の日本はすべて間違っていた」など、とても簡単には言えないことなのに、そう結論づける。逆に靖国神社問題では「日本の代表がお参りするのは当然」と言えばいいのに、できない。そして北方領土問題も「一刀両断」に切るべきことなのだという。

上坂さんによれば、この問題は「単純で簡単」だ。四島がソ連に「拉致」されたのは明白だからである。日本はそっくり取り戻すことだけ考えればいい。「面積で2等分」といった姑息(こそく)な考えすら出てくる政府関係者に、ぜひとも学ばせたい「歯切れの良さ」だった。

それで思い出すのは、マーガレット・サッチャー元英国首相をめぐる話である。1982年、アルゼンチンに占領されたフォークランド諸島を取り戻すため強攻策を打ち出した。だが閣僚たちはみな消極的だ。そこでこう叫んだという。「この内閣に男は1人しかいないのか」。

たぶん危ないジョークだろう。しかし彼女もまた「一刀両断」と「迷うべきこと」との区別ができていたように思える。上坂さんを失った今、日本でそんな「仕分け」のできる人が何人いるのか、心もとない。そして限りなく寂しい。【産経妙】
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DATE: 2009/04/19(日)   CATEGORY: 社説
高齢者医療―税金の投入拡大も視野に
 新制度が始まってわずか半年で、首相までが「抜本的に見直す」と言い出したあの騒ぎは何だったのか。

 高齢者医療制度について、与党プロジェクトチームは結局、抜本見直しの議論を秋以降へ先送りした。決めたことといえば、「後期高齢者」という呼び方をやめることや当面の負担軽減策だけだ。舛添厚生労働相の有識者検討会も、意見をまとめないまま先月、審議を打ち切った。

 背景には、新制度の手直しで反発がやわらいできた事情がある。保険料を年金から強制的に天引きするのをやめて口座振替を選べるようにし、低所得層の負担も軽減した効果だ。

 NPO法人・日本医療政策機構が1月に実施した世論調査では、基本的にいまの制度を維持すべきだと答えた人が49%。70代以上ではその割合がもっとも高く、56%にのぼった。

 自治体からも「一貫しない政策に住民が不安や不信を募らせている」と、むしろ制度の定着をはかるよう求める声が出ている。

 ならば、政府・与党は「実施した新制度をベースに必要な改善をする」とはっきりかじを定めるべきだ。

 では何を見直すか。75歳以上を独立させた新制度にお年寄りが抱く最大の不安は、保険料の負担がどんどん上がりはしないか、受けられる医療の内容が財政事情によって将来制限されることはないか、という点だろう。

 高齢化で、お年寄りの医療費はさらに膨らんでいく。新制度ではその半分は税金でまかなわれるが、4割は働く世代が負担し、1割はお年寄り自身が保険料で負担することになった。

 この負担の割合が変わらなければ、医療費の拡大に従って、保険料も2年ごとの見直しで引き上げられる。一方で年金の給付は、少子化が進むのに伴って目減りしていきそうだ。

 負担可能な保険料の水準はどこか。税金の割合を半分以上へ増やしていかねばならないのではないか。これらの点をめぐる議論を急ぐべきだ。

 野党も、新制度の廃止を訴えるだけでは済まされない。

 民主党は、年齢や職業にかかわらずみんなが一つの制度に入る「一元化」を掲げている。しかし、サラリーマンと自営業者では、所得の把握状況や、保険料算定のもとになる「収入」のとらえ方が異なる。どうやって公平な負担のルールをつくるのか。

 いまは健保組合ごとに保険料率が違うが、すべて同じ保険料率となれば大幅な負担増になる人も出てくる。一元化で負担はどう変わるのかなど、具体的でていねいな説明がなければ、混乱を広げることになりかねない。

 政権交代が現実に起きる可能性があるときだからこそ、野党も責任ある選択肢を示してほしい。

4/19 朝日新聞 社説
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DATE: 2009/04/19(日)   CATEGORY: 社説
社会保障カード 不安解消が導入の前提
 年金手帳や医療・介護保険証の役割を1枚のカードにまとめる「社会保障カード(仮称)」は、自宅で年金記録が閲覧できるなど便利な機能を多く持っているが、その半面、個人情報侵害の不安などのリスクと背中合わせになっている。カードの利点は認めるが、国民が不安や懸念を持たないシステムを作ることが導入の大前提だ。

 厚生労働省の有識者検討会が社会保障カードの基本計画の報告書をまとめた。同省は今年度中に複数の市町村で実証実験を行い、問題点を洗い出し、11年度の導入を目指している。検討会は今年3月には報告書をまとめる予定だったが、委員の意見集約が遅れた。そこで「一定の結論を得たものではない」と、ただし書きを付けたうえで了承し、今後さらに検討を続けることになった。

 報告書がまとまったから終わりではない。基本計画は十分なものとは言えず、残された問題も多い。課題を残さず議論し、よりよい仕組みにしていく作業を続けるべきだ。それを怠り、カードを日常的に使う国民からそっぽを向かれたら、巨額の投資が無駄になる。

 カードの導入には賛否両論がある。プライバシー侵害や情報漏れの危険性があるからだ。そこで個人情報の一元的管理への不安を解消する手段として、年金、医療、介護の情報を集約化せず、カードで中継データベースにアクセスし、そこから年金など個別のデータベースに接続して情報を得る仕組みとした。これによって年金や保険証の番号を共通化し、国民一人一人に社会保障番号をつけて管理することは見送った。中継データベースへのアクセスは安全性が高いと言われる「公開鍵暗号」の技術を採用する。

 公的機関による個人情報管理システムが幅広く国民に理解を得られないのは、住民基本台帳ネットワークが普及しないことなどからも分かるように、公務員に対する国民の根深い不信感があるからだ。公務員に対する不信感をぬぐい去ることも重要なことだ。

 社会保障カード導入の前に、国民に説明すべき課題がある。導入のためのシステム構築などにかかる費用の試算を早急に明らかにし、費用対効果を判断する材料を示すべきだ。

 次に、政府は現在行っている電子政府・自治体を目指す「国民電子私書箱構想」の検討を急ぎ、国民に示すべきだ。この構想の重要な柱として社会保障カードが位置づけられており、報告書は「同カードのためだけの新たな投資は極力避けることが必要」と指摘している。無駄な二重投資を避けるためにも、政府は全体構想を早く示すべきだ。

4/19 毎日新聞 余録
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DATE: 2009/04/19(日)   CATEGORY: コラム
太陽光発電【余録】
南米チリのアタカマ、スペイン領カナリア諸島、ハワイ島のマウナケア山。これら3地点の共通項がすぐに思い浮かぶとすれば、天文ファンに違いない。

天候がよく、晴天率が高い。湿気が少なく、大気が安定している。近くに街明かりもない。こうした条件は、地上から望遠鏡で宇宙を見通すのに欠かせない。ところが、地球上にそんな良い場所はそうは残っていない。そこで、これらの場所に各国の望遠鏡が林立することになる。

考えてみると、この条件は太陽光発電にとっても悪くない。そこに目をつけた東京大学が、天文学と太陽光発電を結びつけた、めずらしいプロジェクトを提案している。アタカマ砂漠に太陽光発電施設を設置し、電気のロスがない超電導ケーブルで近隣の街に送電する。同時に、大型赤外線望遠鏡を建設し、ここの電力もまかなう構想だ。

アタカマ以外はどうかと思ったら、住友商事が昨年、カナリア諸島のテネリフェ島で太陽光発電事業を行うと発表していた。この島に限らず、スペインは太陽光発電の適地で、急速に導入量を増やしている。これまでの累積では、すでに日本を抜いたともいわれる。

日本の導入が伸び悩んだのは政策の失敗だが、ここへきて経済対策として再び浮上してきた。太陽光発電を20年に現在の20倍にする戦略や、公立小中学校に太陽光発電設備を設置する対策が政府から公表されている。

ガリレオが初めて望遠鏡を夜空に向けてから今年で400年。天文学者は観測場所を求め、宇宙にまで進出するようになった。太陽光発電も「日本は日照が足りない」などといわず、世界に可能性を求めていく時ではないだろうか。【余録】
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DATE: 2009/04/18(土)   CATEGORY: コラム
タイムマシンで行きたい時代は【天声人語】
10歳の女の子の独白である。〈私は不思議に思う/悲しい時くるしい時、時間は長い/楽しい時うれしい時、時間は短い/どうして時間はとまらないのかな/タイムマシンがあれば楽しいと思う/赤ちゃんの時や未来へ行ってみたり/いろんなことをしてみたい/今私がすることは/あしたに向かって歩くこと〉。

宇宙で人が暮らす時世というのに、時間旅行はままならない。時は止まらず、戻らず、秒針が刻む「今」があるだけだ。過去は振り返り、未来は夢想するしかない。

小紙別刷り「be」が、読者8500人にタイムマシンで行きたい時代を聞いたところ、過去が59%、未来が41%と割れた。過去は70年代、50〜60年代、80年代に続き江戸時代が人気だった。未来は100年後、10年後、30年後の順だ。

理由をざっと見ると、過去派は現在の自分につながる何かを変えたいらしい。未来派は、自分や社会の行く末に案ずるところがあるようだ。江戸の世や千年後の世界は、好奇心に誘われての旅先と思われる。

悔いも憂いも加齢とともに増すけれど、お構いなく歳月は飛んでいく。365日が短くなるのは、何をするにも「時の残量」がよぎるせいか。夢のない話で恐縮だが、タイムマシンに乗るなら、行き先はともかく足腰が立つうちにと願う。

冒頭の詩「時計」は93年、小紙群馬版に載った。作者は「あした」へと歩き続け、20代も半ばのはずだ。この詩に宿る、夢は夢として今をしっかり生きる心根は、充実した人生の支えになろう。正子さん、まだお持ちだろうか。【天声人語】
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DATE: 2009/04/18(土)   CATEGORY: 社説
消費者庁 地方の足腰も鍛えよ
 消費者庁設置関連法案が衆院を通過した。今国会で成立し年内にも発足する。しかし、被害情報などを吸い上げる地方の窓口強化は心もとない。疲弊著しい地方の立て直しにもっと力を注ぐべきだ。

 消費者行政は農林水産、経済産業省など省庁縦割りで進められてきた。それを束ね、司令塔役を担わせる中央組織の姿をどう描くべきか。国会審議は「内閣からの独立性」をめぐり政府・与党と民主党が対立したが、修正協議で決着が図られた。

 妥協策は、政府提案の消費者庁の下部組織として企画立案などを提言する民間人の消費者委員会を消費者庁本体と同格とし、独立性と監視能力を高めることで折り合った。

 消費者委は首相に勧告する権限も持つ。消費者庁の骨格を維持しつつ、内閣から独立させる民主党の消費者権利院構想の考え方も反映させた折衷案だ。

 誕生する消費者庁には消費者行政に関係する二十九本の法令が他省庁から移管され、一元的に所管する。職員二百人で発足し、消費者からの相談や情報提供を二十四時間体制で受け付ける。

 しかし、被害者をどう救うかなど、積み残した課題も多い。優先順位からいえば、まずは消費者との直接の接点となる地方消費生活センターの再生を急ぐべきだ。

 「相談員の専門知識習熟には四−五年かかるが、雇い止めの影響で26・3%が勤務三年未満」。衆院の参考人質疑で消費者団体の幹部が窮状をこう訴えた。自治体の消費者行政予算は財政悪化により、この十年間で半分近くに減った。相談員の九割以上は非正規雇用という。研修費用にも事欠く。

 中国製ギョーザ中毒事件では兵庫、千葉県で被害が確認され、二十人を超える死者を出したガス湯沸かし器の中毒被害は全国に広がった。国の消費者行政は自治体からの情報に頼っており、アンテナが錆(さ)びついたままで消費者庁は有効に機能するだろうか。

 法案の修正協議の結果、地方消費者行政活性化基金を積み増して相談員の人件費にも一部充てられることになったが、センターの人員配置や国の支援などは「三年以内に検討」と先送りされた。

 消費者庁は、明治以来の産業優先から生活者重視の行政に転換する−が理念のはずだ。司令塔の輪郭は見えてきたが、それを手足となって支える「現場力」を弱らせては生活者重視が危うくなる。

2009年4月18日 中日新聞 社説
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DATE: 2009/04/18(土)   CATEGORY: 社説
「3.5島」返還 首相の説明を聞きたい
 日露間の懸案の北方領土問題で麻生内閣の姿勢に不透明感が漂っている。麻生太郎首相や首相周辺から、日本が原則としている四島返還にこだわらないとの発言が出ているからだ。5月にプーチン・ロシア首相を迎える麻生首相は真意を自らの口で説明すべきである。

 2月の日露首脳会談では、「独創的で型にはまらないアプローチ」により領土交渉を行うことが確認された。その際、麻生首相は記者団に「役人に任せていてはだめだ。政治家が解決する以外に方法はない」「向こうが2島、こっちが4島では全く進展しない」などと語った。

 「独創的なアプローチ」の内容については言及しなかったが、日本の首相が四島返還にこだわらない考えを公言したのは初めてだった。

 麻生首相は外相当時の06年に国会で「択捉島の約25%を(国後、歯舞、色丹の)3島にくっつけると(面積は)50−50の比率になる」と面積等分解決案に触れたのをはじめ、3島返還論や共同開発論にも言及したことがある。過去の発言と照らし合わせ、四島返還方針の変更を検討しているのかと受け取る向きもあった。

 しかし、政府はその後の閣議で面積等分案を否定する答弁書を決定し、その中で「北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様および条件は柔軟に対応する」との従来方針を強調した。

 こうした経緯の中で、今度は政府代表を務める谷内正太郎前外務事務次官が毎日新聞のインタビューで、「個人的な考え」と断りながら「3.5島返還でもいいのではないか」と四島返還にこだわるべきではないとの考えを示した。

 谷内氏は「(歯舞、色丹の)2島では全体の7%にすぎない。択捉島の面積がすごく大きく、面積を折半すると3島プラス択捉の20〜25%ぐらいになる」とも述べた。麻生首相の面積等分案と軌を一にしている。

 河村建夫官房長官はさっそく、谷内発言は政府の公式見解ではないと打ち消した。だが、谷内氏は政府代表の立場にあり、麻生首相が外相だった時の外務事務次官でもある。首相の意向を反映した発言と受けとっても不自然ではないだろう。

 外交に駆け引きはつきものである。麻生首相や谷内氏の発言はロシアから柔軟姿勢を引き出すための交渉戦術なのかもしれない。そうだとしても、衆院選を控えたこの時期に北方領土問題の打開を急ぐのはリスクを伴う。国論が分かれる重要問題は民意を受けた政権が対処すべきである。首相がどうしても自身の手で解決への道筋をつけたいというなら国民に説明したうえで衆院選で問うのが筋である。

4/18 毎日新聞 社説
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DATE: 2009/04/18(土)   CATEGORY: コラム
イチロー選手の最多安打記録【余録】
地獄の閻魔(えんま)大王の取り調べに「ベースボールは餓鬼になってもやろうと思っています。地獄にも矢張(やっぱり)広い場所がありますか」と聞いたのは俳人、正岡子規である。むろん戯文での話だが、さすが「打者」「走者」「四球」などの野球用語を案出した人だ。

その子規がベースボールを紹介した一文では「廻了(かいりょう)」「除外」「短遮(たんしゃ)」「攫者(かくしゃ)」などの言葉も見える。それぞれ「ホームイン」「アウト」「ショートストップ」「キャッチャー」だ。こちらは後世には残らなかったが、工夫はうかがえる。

そこには「安打」の言葉は見えないので、後の誰かが考えたらしい。こうして米国生まれの用語を漢語とカタカナ語に置き換え、みごとに野球を定着させた日本人である。だが明治とはいわず10年前でも、「日本最多安打記録」が米国で達成されると予想できた人はいないだろう。

張本勲さんの3085安打という日本最多安打記録をイチロー選手がとうとう日米通算3086安打の達成で塗り替えた。今季初出場だった前日は満塁ホームランで派手にタイ記録に追いつき、続く試合で軽々と新記録の扉を開いてみせた。

こう書けば、野球の神様に愛された天才の当然の通過点と思えるし、現にそうなろう。だがWBC大会で不調にあえぎ、その後胃かいようで苦しむ姿を見せたイチロー選手だ。「安打の数よりはるかに多くの悔しさを味わってきた」というかつての言葉の重みが今はよく分かる。

先には9年連続200安打という大リーグ記録の扉も見える今季である。「打者」という言葉にどこまで新たな記録を盛り込めるのか。子規も地獄、いや極楽の広っぱから応援していよう。【余録】
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DATE: 2009/04/18(土)   CATEGORY: コラム
協会の生き残る道【編集手帳】
パソコンや携帯メールで文章をつづるとき、入力した言葉が思いもよらぬ1行となって画面に現れることがある。〈良く出来た内容です〉が〈欲で汚いようです〉になっては、天と地ほども違う。

日本漢字能力検定協会は漢字検定や「今年の漢字」のほか、傑作な変換ミスを公募する「変漢ミスコンテスト」も手がけている。前段のミス事例は協会ホームページの候補作から引いた。

公益事業でありながら多額の利益を上げるなど、不明朗な運営の責任を取って大久保昇理事長と長男の副理事長が辞任したが、それをもって協会の改善策を〈良く出来た内容です〉と評するわけにはいかない。

親子が代表を務めるファミリー企業と協会の取引は過去3年間で66億円にのぼるが、取引の一部は継続するという。誰の目にも、〈欲で汚いようです〉と映ろう。前理事長は記者会見で「役職を離れても新理事長を支える」と述べたが、“お掃除の邪魔”以外の何物でもあるまい。

前理事長親子の影をぬぐい去り、旧体制ときっぱり一線を画すことが協会の生き残る道である。〈画す〉を変換ミスで〈隠す〉にしてはいけない。【編集手帳】
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DATE: 2009/04/17(金)   CATEGORY: コラム
赤と白を混ぜてロゼ(ばら色)となす【中日春秋】
われわれが、ウイスキーや焼酎をそうするように、古代ギリシャでは、ワインも水、時にはお湯で割って飲んでいたようだ。

生(き)で飲むのは体に悪いと考えられ、特に冷たい水で割るのが好まれた。クラテル(混酒器)という甕(かめ)で混ぜたが、基本は薄め。詩人ヘシオドスも詩の中で「水3酒1」を推奨しているという(塚田孝雄著『シーザーの晩餐(ばんさん)』)。

フランスでは今、ワインにワインを混ぜる話がちょっとした騒動になっている。欧州連合の委員会が、EU域内では禁じられていた「赤と白を混ぜてロゼとなす」製法を一転、認める方針を打ち出したためだ。

発酵の途中、適度に色づいたところでブドウの皮などを取り除くといった方法が伝統的なロゼワインの製法。オーストラリアなどから域内に流れ込む安価な「混合ロゼ」への対抗策らしいが、昔ながらの製法を守るワイン生産者らは「“本物”の評判まで下がる」と猛反発している。

かつてボルドー地方を訪ねた時、あるシャトー(ワイン醸造元)の主人は毎年の発酵期間を記したノートを見せ、「なぜ、年によりこうもまちまちなのか分かるか」と聞いた。こちらが首を振ると、言った。「謎さ。多分、魔術師がいるんだ」。

赤+白=ロゼは、いわば色の数式であり、この自然の魔術の玄妙さとは遠い。今後、“本物”を待つ未来がロゼ(ばら色)ならいいのだが。【中日春秋】
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DATE: 2009/04/17(金)   CATEGORY: コラム
週刊誌の技と芸【余録】
出版社として初めて新潮社が「週刊新潮」を出したのは1956年だった。それまでの新聞系週刊誌と違い、自前の情報網も、取材のノウハウもなく、記事の書き手もいないままの船出だ。先行きが危ぶまれた。

創刊の翌々年の旅客機墜落事故の際も、編集部から航空会社に駆けつけた記者は報道各社が乗客名簿を争って奪い去るのをぼうぜんと見ているしかなかった。コピー機のない時代、数少ない名簿入手が最優先ということを知らなかったのだ。

記者は仕方なく誰も見向きもしないキャンセル名簿をもらって帰る。次号のトップ記事は「特別レポート 私は死神から逃れた」。キャンセルで命拾いした人々の運命のあやを描いて、好評だった(高橋呉郎著「週刊誌風雲録」文春新書)。

それから半世紀、新聞やテレビではできない技も芸もたっぷりたくわえた出版社系週刊誌の元祖である。だから海千山千をもってなるはずの編集長に「こうして『ニセ実行犯』に騙(だま)された」と世間知らずをわびられて戸惑う読者もいよう。

きのう発売された「週刊新潮」は、朝日新聞阪神支局襲撃事件の「実行犯」を名乗る人物の連載手記を「誤報」と認め、掲載の経緯を10ページにわたり報告して謝罪した。読めば、決して取材記者としてえらそうなことをいえる実績のない小欄筆者ですらワキの甘さを指摘したくなる。

キャンセル名簿も誤報の謝罪も売り物にするのが週刊誌の本領だ。が、そこで「報道機関が誤報から100%免れることは不可能」と胸を張られては白ける。真偽のあわいに切り込むのが週刊誌ジャーナリズムの技と芸ならば、その技芸の衰えをもっと心配してはどうか。【余録】
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DATE: 2009/04/17(金)   CATEGORY: コラム
漢字ブーム【産経妙】
不況になると日本語ブームが起こるというジンクスがある。明治大学教授の加藤徹さんが、「中央公論」5月号に書いている。昭和32年の鍋底不況、48年の石油ショックのあと、そして平成不況のさなかの11年、13年と、いずれも書名に「日本語」の入った本が、話題となった。

好景気のときは、ビジネス本やノウハウ本が売れる。一方不況では、人々の目が内向きになり、日本語へ関心が向く。今回の世界同時不況のもとでは、漢字ブームの形であらわれた、という。

昭和50年の発足時にわずか672人だった日本漢字能力検定の受検者も、今や270万人を超えている。ただ、大ヒットの理由はブームだけではなさそうだ。創立者の大久保昇氏は、大手電機会社を退職して、京都市内で文化教室を経営していた。

漢字のビジネス化を思いついたのは、子供の漢字離れを嘆く講師の声を聞いたときだ。ワープロ、パソコンの普及も追い風となった。毎年12月に、世相を表す「今年の漢字」の1文字を清水寺で披露するイベントは、アイデアマンとしての、大久保氏の面目躍如だろう。

協会の理事長、副理事長を、長男とともに辞任することを明らかにした記者会見で、大久保氏はこう言いたかったのではないか。「漢検を大成功に導いたのは、私だ」。とすれば、自分のファミリー企業と協会との取引を今後も続けるという、往生際の悪さも説明できる。

しかし、公益事業であげた巨額の利益の「私物化」は、もはや許されるものではない。今の心境を漢字1文字で、と記者に聞かれた大久保氏は、「2文字は出やすいけれど」と言葉を濁した。どんな言葉が浮かんだのか知らないが、「反省」の2文字でないことだけは、確かだ。【産経妙】
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DATE: 2009/04/17(金)   CATEGORY: コラム
苦、苦、苦…【編集手帳】
詩人で評論家の有馬(ありま)敲(たかし)さんに、「ヒロシマの鳩(はと)」という詩がある。被爆地の空を舞う鳩に呼びかけて言う。〈近くの球場から聞こえる/大歓声よりも高く鳴け/苦、苦、苦、苦、苦〉。

張本勲さん(68)の半生をたどるとき、鳩の声がする。広島での被爆、幼時の大やけどで右手に残った障害、在日韓国人二世としてなめた辛酸、家計の窮迫――これでもかと「苦」が続く。

野球を学びに大阪の高校へ進むとき、亡き父親に代わって一家を支える兄は、月々2万3000円の給料から1万円を仕送りしてくれたという。試合後も毎夜300本は欠かさなかった素振りと肉親の情愛から、安打3085本の日本プロ野球記録は生まれている。

イチロー選手(35)が日米通算の安打数で張本さんの記録に並んだ。30年に及ぼうという歳月を、ただ一人の登山者も寄せつけずにきた大記録の名山を仰ぐ。

先のWBC大会では不調にあえぎ、メジャー開幕には胃潰瘍(いかいよう)を患って出遅れ、イチロー選手も試練の雨風に打たれて頂上に立った。3085メートルならぬ「3085本」の霊峰にはいまも、〈苦、苦、苦…〉と鳴く鳩が棲(す)むらしい。【編集手帳】
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DATE: 2009/04/16(木)   CATEGORY: コラム
喜劇王チャップリン【有明妙】
希代の映画の語り部だった映画評論家・淀川長治さん(1909−1998年)の生誕100年を記念した特別企画展が、佐賀市の県立図書館で21日まで開かれている。自伝や著作など約80冊を展示・貸し出ししているが、その中で喜劇王チャップリンに関する本が5冊あるのが目を引いた。

淀川さんが最も影響を受けたのはチャップリンで、人生や生き方を学んだと語っている。きょうはチャップリンデー。1889年4月16日にロンドンで生まれた。ヒトラーの誕生日と4日違い。そのヒトラーとナチズムの狂気、ユダヤ人迫害を真っ向から批判した映画が「独裁者」だ。

88年の生涯で作った81本の映画の中で、最も興行的に成功した作品である。最後の6分間のチャップリンの演説は圧巻だ。「自由は決して失われぬ」「独裁者の奴隷になるな」。彼の映画は諧謔(かいぎゃく)と皮肉のかたまりといわれるが、これは抵抗のメッセージだ。

映画が作られてから69年たつが、世界は独裁者と無縁にはなっていない。アジアでは北朝鮮の金正日総書記がその最右翼というところだろう。3度目の国防委員長に就き、あらためて支配体制の盤石さを示した。

独裁の下に国民はミサイルや核開発など軍事優先の犠牲になり、特に地方は飢えと荒廃に苦しんでいるという。やせ細った子どもたちをテレビで目にすると怒りがわく。今また、6カ国協議離脱を表明、強硬路線を取り始めた。

チャップリンの創作は、その貧しい生い立ちから、常に弱者や貧者の立場に立って行われた。それは人類愛、人間愛に満たされている。彼が生きていたら、庶民の苦しみを何とも思わぬ為政者の所業を痛烈に風刺したのではないだろうか。【有明妙】
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DATE: 2009/04/16(木)   CATEGORY: 社説
国の直轄事業の見直しを先送りするな
 国道や河川など政府が実施する公共事業の見直し論議が始まった。地方負担金のあり方が焦点である。

 国の直轄事業では一般に建設費の3分の1、維持管理費の半分近くを自治体が負担している。その負担額は地方全体で年間1兆円を超す。

 先週開かれた全国知事会と国土交通省などとの協議では、負担金の中身について各知事から批判が相次いだ。国道の整備費などのなかに国の出先機関の改築費や職員の給与、退職金まで一部含まれていることが判明したためだ。農林水産省の事業でも同様な事例が見つかっている。

 政府は直轄事業の費用の内訳について十分な説明をしないまま、負担金の金額だけを自治体に通知してきた。ふたを少し開けてみたら国が支出すべき費用まで盛り込まれていたのだから、知事が怒るのも無理はない。自治体の事業に比べて国の事業は建設費、維持管理費ともにコストが割高だという指摘も多い。

 この問題については地方分権改革推進委員会も審議している。自治体が個々の事業の工事費が妥当かどうか国と事前に協議しようと思っても、ドンブリ勘定のままではらちがあかない。国交省や農水省は早急に全体像を公表すべきだ。

 政府は先週末に決めた追加経済対策に、補助事業も含めた公共事業の地方負担分に充てる1兆4000億円の新たな交付金を盛り込んだ。地方財政が苦しいなかで事業を円滑に実施するための臨時的な対策だろうが、本来、望ましいとは言い難い。

 お金をばらまくことで地方を懐柔し、直轄事業の見直しやそれを担う国の出先機関の改革を先送りする狙いも見え隠れする。目先の財源問題と制度改革とは区別すべきだ。

 受益と負担の関係を考えると、直轄事業といえども建設費の一部を自治体が負担する現行制度は一定の合理性があるだろう。一方、県道の維持管理費は自治体が丸々負担するのに、国道や河川では国の支出が半分強にとどまるのは公平ではない。

 政府が手がける公共事業は今後、首都圏の空港整備のような国際競争力の強化につながる事業や高速道路など便益が広く及ぶ事業に限定すべきだ。地方分権を進めるためにもそれ以外は権限と財源を併せてすべて自治体に移し、どの事業を優先するかは地域ごとに決めればいい。

 各県の知事にも注文がある。今回の問題は都道府県が実施する公共事業における市町村の負担金にもそのまま当てはまる。国を批判するなら、市町村の声もしっかりと受け止め、早急に改善すべきである。

4/16 日経新聞 社説
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DATE: 2009/04/16(木)   CATEGORY: コラム
混獲が全漁獲量の40%【中日春秋】
昔々、ある男が罪を得て出奔する際、宝玉を池に投じた。それを知った王は池の水を全部くみ出して捜させた。だが、宝玉はみつからず、ただ池の魚が死んだだけだった…。

池が干上がる経緯としては「城門が火事になり、池の水を使って消したため」という別バージョンもあるが、いずれ『呂氏春秋』など中国古典よりの故事。而(しこう)して<池魚の殃(わざわい)>といえば、火事もしくは、とばっちりを食うことのたとえである。

漁業で、狙った魚以外の魚や生物を一緒に漁獲してしまうことを「混獲」というそうだ。世界自然保護基金(WWF)の研究グループがきのう、混獲が世界の全漁獲量の40%を占めるとの調査結果を発表した。

釣りでいう「外道(げどう)」に当たる混獲物の多くは捨てられてしまう。極端なのは「フカヒレ」目当てにサメを狙う底引き網漁で、漁獲の九割以上が廃棄されていた。側杖(そばづえ)を食って網にかけられ、揚げ句、ポイされる魚にすれば、まさに<海魚の殃>だ。

漁業資源減少の一因でもあれば、人にも<殃>だろう。混獲が少ない漁法の開発、普及を求めるグループの言い分はもっとも。日本の混獲率は推定13%と低いようだが、責任は恐らくそこまで軽くない。

世界の混獲でとれた“本命魚”が日本人の胃袋に収まる割合はかなり高いだろうから。多様な魚に目を向けるなど消費側にもできることはありそうである。【中日春秋】
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DATE: 2009/04/16(木)   CATEGORY: コラム
牙をむいた春の海【余録】
画家の司馬江漢は天明年間に当時捕鯨の一大拠点だった平戸藩の生月(いきつき)島を訪れた。「アリャアリャ」と漕(こ)がれる八挺艪(はっちょうろ)で「飛ぶが如(ごと)く」クジラを追い込む勢子(せこ)船に乗った江漢は、船酔いに苦しみつつ壮絶な捕鯨の現場を見た(「江漢西遊日記」東洋文庫)。

17艘(そう)の船の銛(もり)でクジラが弱ると、一人がその頭にとりつき、潮吹きのところに穴をあけて綱を通そうとする。もう一人は海に飛び込み、綱を持って腹にとりつく。「此(こ)の働き誠に危うきこといわん方なし」。江漢も仰天した命がけの漁だ。

当地の捕鯨は江戸時代の盛期には200の船と3000人の船乗りを擁した。クジラは消えても、東シナ海に海の幸を果敢に追う人々の営みは時代を超えて受け継がれる。今は日本有数の遠洋巻き網漁業基地となった長崎県平戸市生月町だ。

その舘浦(たちうら)港を出港後間もなく転覆、22人の乗組員のうち船長ら12人が行方不明になっている巻き網漁船「第11大栄丸」の遭難である。東シナ海へ向かう大型漁船に沿岸から十数キロの春の海で何が起こったのか。救助された乗組員の一人は「右後方から大波」に襲われたと証言する。

当時の現場の強風や波浪は、船の大きさからすれば危険なほどではなかったという。だが専門家は風向きの変化が引き起こす「三角波」という大波や、大波で船尾が持ち上がり操船不能になるブローチングという現象の可能性を指摘する。

時に人間の予測や想像のスキを突いてすさまじい猛威をあらわす海である。その海に勇気をもって乗り出し、豊かな恵みを手にしてきたこの土地の歴史に連なる第11大栄丸の乗組員だ。今はその生還への祈りを家族と共にしたい。【余録】
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DATE: 2009/04/16(木)   CATEGORY: コラム
最高裁が逆転無罪【天声人語】
ひとくくりに「痛勤電車」と恨まれても、イタさは各様だ。すし詰めともなれば、つり革や握り棒にすがるまでもない。青年の背が支えになり、おじさんの腹がクッションと化し、乗客はひとかたまりで揺れる。身を任せながら、昨今、手の位置だけは気をつけている。

痴漢の疑いで捕まり、一、二審で懲役1年10カ月の実刑判決を受けた防衛医大教授(63)に、最高裁が逆転無罪を言い渡した。痴漢事件では過去10年、30件以上の無罪判決が出たが、さすがに最高裁は初めてという。

教授は3年前の朝、通勤の満員電車で女子高校生に突然ネクタイをつかまれる。悲劇の始まりだ。下着に手を入れた容疑だった。しかし最高裁判決は、彼女がしつこい被害から逃れようとしていないなどと、不審の目を向けた。

狂言とは思いたくない。女子高校生の思い違いとすれば、冤罪により真犯人が笑い、善人の人生が暗転したことになる。卑劣な犯罪に泣いた被害者は無罪判決をどう消化するのだろう。

物証なし、目撃者なし、あるのは被害者の供述と容疑者の全面否認だけ。こんな「藪(やぶ)の中」で裁けるものかと思うが、検察の幹部は「泣いている人がいるのに、やらないわけにはいかない」と語る。慎重の上にも慎重に吟味するほかない。

「痴漢したでしょう」とにらまれ、一番うろたえるのは身に覚えのない場合だろう。涙声でとがめる少女を前にして、冷静に「両手のアリバイ」を立証する自信はない。女性の尊厳を踏みにじり、時に男性まで泣かせる鬼畜の病に、つける薬を知らない。【天声人語】
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DATE: 2009/04/16(木)   CATEGORY: コラム
古い貴金属店【編集手帳】
出版社には各社独特の雰囲気がある。そう語ったのは作家の野坂昭如さんである。例えれば文芸春秋は〈株式会社〉、講談社は〈総合病院〉、中央公論社(現・中央公論新社)は〈単科大学〉、新潮社は〈古い貴金属店〉かな、と。

文芸春秋の名編集者で社長も務めた池島信平さんの対談集「文学よもやま話」(文芸春秋)で述べている。40年も昔の対談で、各社のカラーがその後どう変わったかは分からないが、好ましい変化ばかりでもなかろう。

朝日新聞阪神支局襲撃事件の“実行犯”を名乗る男性の手記を連載した「週刊新潮」が誤報であったことを認め、きょう発売の4月23日号に編集長名の謝罪記事を掲載するという。

「男性にだまされた」という言い分が本当だとしても、綿密な鑑定(裏付け取材)もせずに手記の品質を保証した落ち度は同誌にある。「これぞ秘宝のなかの秘宝」という触れ込みで宝石と称し、石ころを売った。〈古い貴金属店〉がなくした信用を取り戻すのは容易であるまい。

老舗の暖簾(のれん)に心を許し、息を詰めて食い入るように手記を読みふけったひとりである。ばかなことをした。【編集手帳】
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DATE: 2009/04/15(水)   CATEGORY: ニュース
XPの「メインストリーム・サポート」が終了
Windows XPの「メインストリーム・サポート」が終了、14日から「延長サポート」に移行

 米国Microsoftは4月13日、かねてからの予定どおり、14日以降Windows XPを「メインストリーム・サポート(mainstream support)」段階から「延長サポート(extended support)」段階に移行させると発表した。

 Microsoftのコンシューマー向け製品メインストリーム・サポートは、通常は5年で終了することになっている。だが、XPの後継バージョンであるWindows Vistaが投入されるまでかなり間隔が開いてしまったため、XPの場合はメインストリーム・サポートが7年半続くことになった。

 同社は2年半前、企業向けのXP Professional Editionに合わせるかたちで、XP Home EditionとXP Media Center Editionのメインストリーム・サポートを2009年まで延長。併せて、延長サポートも2014年までに変更した。

 Microsoftによると、延長サポートの下で提供されるのは有料サポートだけになるという(サポートを受けるたびに料金を支払うか、前払い方式のサポート・プログラムを利用する)。セキュリティ関連以外のホット・フィックスも有料となり、Extended Hotfix Supportを購入した顧客にのみ提供されることになる。

 ただし、セキュリティ・アップデートは例外だ。5年後の2014年4月8日まで、Windows Updateを通じて無料で提供される。

 不振のVistaに代わり、XPは企業ユーザーの間で高い支持を得ている。調査会社Dimensional Researchが企業のIT専門職1,100人を対象に行った最近の調査でも、所属する企業や組織でXPが使われていると答えた人は全体の97%を占めた。

 数日前に報じられた、XPに関するルールの緩和も、こうしたXP人気が背景にある。XP搭載PCの新品販売を継続したいと考えているコンピュータ・メーカーに考慮して、Microsoftがルールを緩めることを示唆したとされるメモが明らかにされた。

 そのメモによると、OEM各社は、新品のマシンに「XP PC」と表示することが認められるようになり(2008年6月以降認められていなかった)、Windows 7リリース後6カ月間はXPへのダウングレードも可能になるという。

 ただしMicrosoftの広報担当者は、13日付けの電子メールで、こう述べている。「コンピュータ・メーカーが提供する新品のマシンでXPをサポートするのはメーカー側であり、当社ではない。XPがプリインストールされたマシンを購入した顧客は、購入の際にOEMが定めるサポート・ポリシーに従うことになる」

 ちなみに、Office 2003のメインストリーム・サポートも、14日をもって延長サポートに移行する。

4月14日 Computerworld.jp
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DATE: 2009/04/15(水)   CATEGORY: コラム
最終章はドラマチックに始まった【産経妙】
北朝鮮のメディアは女性が元気だ。テレビでは、抑揚をたっぷりつけて将軍様こと金正日総書記をうたいあげる民族服の女性アナウンサーが有名だが、新聞も負けていない。朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、宋美蘭という女性記者が書いた浪曲調?の記事を掲載した。

金総書記が平壌市内の工場を視察したときのお話。工場関係者は「やせ細った父なる将軍様」を見て声も出ない。「工場を離れる将軍様を見送り、(工場関係者の)むせびなく顔には、二筋の涙がとめどなく流れていた」と名調子が続く。

感動的な「将軍様物語」の一席だが、北朝鮮では、将軍様の病気は長く伏せられていた。なぜこの時期に、当局が「激やせ」を人民に知らせてやろうとしたのか。理由はほどなく明らかになるだろうが、文学的には、物語の最終章がそろそろ近づいていますよ、とのサインと解釈できる。

涙あり、アクションあり、お世継ぎ騒動あり、と最終章はドラマチックに始まった。景気づけにミサイルをぶっ放すわ、核問題を話し合う6カ国協議に「二度と絶対に参加しない」と声明は出すわ、やることなすこと派手だ。

派手だけならまだしも、隣人から無理難題を言ってみかじめ料をとろうとする。しかも話せばわかる相手ではない。結構な金額の「思いやり」代を渡してきた警官も「もっと悪い奴(やつ)がいる」とすぐにはきてくれそうにもない。

では、どうすればいいのか。戸締まりを厳重にして、核とはいわないが、暴漢をやっつけられる飛び道具が必要なのは、子供でもわかる理屈だ。それを「危うい強硬論」と批判する某新聞やテレビ番組がある。言論の自由だからとやかく言わないが、きっと将軍様もお喜びになっていることだろう。【産経妙】
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DATE: 2009/04/15(水)   CATEGORY: コラム
パピプペポンの心優しき国【編集手帳】
タイ語の味わいを伝える五行歌がある。作者は平賀游さんとおっしゃる。〈タイ言葉はいい/あっちでもこっちでも/老いも若きも/パピプペポンと/人みなやさしい〉。

「五行歌秀歌集1」(市井社)に収められた一首だが、元首もプミポン国王、なるほど弾むようなパ行が耳に心地よい言語である。「兵士を焼き殺してやる」「街がめちゃくちゃになればいい」等々、いまその国から届く物騒な物言いは似合わない。

タイで混乱と緊張の非常事態がつづいている。赤いシャツを着たタクシン元首相派の反政府デモに街は荒れ、予定されていた国際会議も流れた。

半年前には黄色いシャツ(反タクシン派)が空港を占拠し、やはり国際会議を延期に追いやっている。両派が代わる代わる国の体面に泥を塗り合う。観光も投資もさらに冷え込むだろう。

色見本の書物をひらき、赤と黄の間に「サンライズ・イエロー」という名の橙(だいだい)色を見つけた。2色が溶け合って収拾の“曙光(しょこう)”をどう手にするか、双方に冷静な知恵が要る。権力抗争で「パピプペポンの心優しき国」の看板を傷つける愚に、政府派も反政府派もない。【編集手帳】
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DATE: 2009/04/15(水)   CATEGORY: コラム
ミツバチの足りない春【余録】
平安貴族も人さまざま、太政大臣までつとめた藤原宗輔の場合はこうだ。「意外にも蜂という人を刺す虫を好んで飼っていた。蜜(みつ)を塗った紙をささげ歩けば、何匹も飛んで来るが刺されない」(今鏡)。蜂飼(はちかいの)大臣(おとど)である。

なにせ貴族社会のことだけに「無益の事」と笑われた。だがある時鳥羽殿でハチの巣が落ちて大騒ぎになる。その場で宗輔はあわてずビワの実にミツバチを群がらせて騒ぎを収め、人々を感心させた。こちらは説話集「十訓抄(じっきんしょう)」にある話だ。

いずれも渡辺孝さんの「ミツバチの文学誌」(筑摩書房)で知った逸話だが、宗輔の手柄話の前段にはクモの巣にかかったハチを助けた武将が、ハチの大群の加勢により大敵を破る報恩譚(たん)もある。「蜂は小さいが、仁智(じんち)の心があるといわれている」。「十訓抄」はそう記している。

これからの季節、メロンやスイカなどの受粉に必要なミツバチだ。ところが昨夏の働きバチ大量死などにより各地でミツバチが不足し、果物価格にも影響が出そうだという。ちょうど豪州でミツバチの病気が広がり、同地からの女王バチの輸入が止まったのも不足を深刻化させた。

ミツバチといえば、数年前に米国で謎の大量失跡が伝えられた。日本での大量死は農薬やダニのためといわれるが、原因ははっきりしない。当面のハチ不足に農林水産省は需給調整を進め、アルゼンチンの女王バチ輸入交渉も急ぐという。

無類の働き者で律義な友のありがたさを改めて思い知らされたこの春だ。大量死や失跡といったミツバチのピンチの真相はしっかり突き止め、手をさしのべたい。ここは人間にも仁智の心があるところを見せねばならない。【余録】
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DATE: 2009/04/14(火)   CATEGORY: 社説
民主連敗 現実直視し次に備えよ
 千葉に続き、秋田知事選で民主党系候補が敗れた。小沢代表の献金問題が与えた影響は否定できない。総選挙を前に世間の厳しい批判がまた浮き彫りになった。現実を直視し早急に態勢を立て直せ。

 二週間前の千葉県知事選では、自民党が三分裂したにもかかわらず、民主党などが推した候補が大差で「無党派」候補に敗北した。

 秋田では、野党陣営の社民が自民県連とともに支持する候補と、民主、国民新の地元組織が支持する候補による事実上の一騎打ちになった。連合秋田も自民系候補の支援に回った。

 分裂構図で苦戦必至だったのに加え、党本部は一切かかわらなかったとして、民主内は表向き動揺を隠している。一方、自民は「政府・与党の景気対策が浸透したのも勝利の一因」と余裕の表情だ。

 小沢氏の秘書を巻き込んだ西松建設事件が民主にマイナスに働いたというのが、世間の受け止めだろう。世論調査では、代表続投反対が六、七割。小沢氏は説明責任を果たしていないとの指摘が圧倒的多数だ。

 二つの知事選で小沢氏は積極的に現地入りする従来の戦術を控えざるを得なかった。総選挙に向けても、代表として先頭に立てないでいる。こんな状況が続くのは、異常な光景に見える。

 進退問題をめぐっては、秘書が起訴された時に辞任するのが筋との声が党内外にあった。結局、小沢氏は「政権交代の実現が最後の仕事だ」と当面の続投を表明したが、こうなってみると、判断を間違えたのではないか。

 検察の捜査が意図的という小沢氏の主張も分からないではない。しかし法廷闘争と政権交代の話はやはり別である。執行部は第三者委員会に一連の献金問題を検証させるという。世論を納得させる内容でなければ、民主への不信が募るだけだろう。

 “小沢ショック”に揺れる民主は、与党に足元をみられ、国会攻防も受け身に回った印象が強い。後半国会の論戦をどのように熱くするか。ポイントは財政出動十五兆円規模となる補正予算案の審議だ。

 民主が批判する「与党の選挙向けのばらまき」との問題点を、一つ一つ議論で精査し、国民に選挙への判断材料を提供すべきだ。

 その観点からすれば、与党が提案する党首討論も民主は拒否せずに受けてはどうか。政権交代を目指す政党トップが討論の舞台に立てないというのはおかしい。

2009年4月14日 中日新聞 社説
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DATE: 2009/04/14(火)   CATEGORY: コラム
深まるタイの政情混乱【余録】
「緑」は春の若葉、「青」は秋の澄んだ空を示すとされた。いや、そうではなく緑は陸、青は海を指したともいう。そんな色でまとまった党派同士が、国を二分して流血の抗争を繰り広げることもあるから人間は怖い。

6世紀前半に東ローマ帝国で起こった緑党と青党の争いのことである。緑と青は戦車競走の御者の服の色で、それぞれの応援団が徒党を組んだのだ。庶民から元老院、貴族、皇帝までがそれらを後押しし、騒乱や暴動が繰り返されたという。

抗争は宗教や政治の対立もはらんで、ついに反乱と大虐殺をもたらし、首都コンスタンチノープルは炎上した。後から振り返れば「なぜこんなばかなことに」という惨禍である。緑と青の違いの間にすら人間の憎悪や敵意はたっぷりと宿る。

さて今、世界を驚かせたのは、タイでの「赤」と「黄」の対立だ。赤をシンボルカラーとするタクシン元首相派、黄色の反タクシン派だが、“黄党”の空港占拠による政権奪取の次は、何と現政権に反発する“赤党”の首脳会議ぶち壊しだった。

赤党はタクシン政権下のばらまき政策で恩恵を受けた農民層の支持を受け、選挙では多数派を占めてきた。これに対し元首相の金権体質や伝統秩序破壊を批判して、旧指導層の力を背景にタクシン派政権を倒してきた黄党だ。色の違いの間には深い社会的、文化的な亀裂が横たわる。

流血はできるだけ避けてきた両派だが、首都のデモ隊の排除では負傷者多数が出ている。この先、対立の歯止めが失われれば、後に「なぜ」と振り返られる惨禍すら招きかねない。両派の指導者には、いつまでも民主主義を街頭に迷わせない賢慮が必要な時である。【余録】
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DATE: 2009/04/14(火)   CATEGORY: コラム
胸のワッペン【編集手帳】
〈お殿さまでも家来でも/お風呂に入る時はみんな裸/かみしも脱いで刀も捨てて/歌の一つも浮かれ出る〉。終戦の翌年に封切られた映画「東京五人男」で古川緑波(ろっぱ)が歌った挿入歌を年配の映画ファンは覚えておいでだろう。

歌詞の続きは記憶がおぼろなので、演芸プロデューサー沢田隆治氏の「上方芸能列伝」(文芸春秋)から引く。〈お役人でもボクらでも/夜の枕はみんな一つ/頭の中味(なかみ)はどっちがどっちか/歌の一つも浮かれ出る〉。

お役人といえば頭がいいものと世評は定まっているが、「頭の中味はどっちがどっちか」、ときに分からなくなることもある。

東京都の下水道局が制服2万着を新調した際に、いったん作成した胸のワッペンをすべて廃棄し、新たに作り直していた。「東京都下水道局」の文字に添えた水色の波線が内規と違うので削ったという。波線1本あったとて、誰が困る。何の支障がある。作り直しの費用が3400万円とは、豪儀なものである。

夜の枕に頭を載せ、「一体、誰のお金を使っているつもりだか…」と独りごちれば、ため息の一つも浮かれ出る。いや、沈み漏れる。【編集手帳】
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DATE: 2009/04/14(火)   CATEGORY: コラム
もてなしの心【産経妙】
外食産業やコンビニで、外国人の店員さんの姿が目立ってきた。先日見たNHKの番組で、各社が外国人従業員への社員教育に、力を入れていることを知った。一番問題になるのは、日本語よりも接客マナーだという。

なぜ、客に笑顔を見せなければならないのか、ということから、理解してもらわなければならない。「もてなしの心」と言い換えてもいい。そんな日本人の特質を、大いに発揮する機会がやってきた。2016年夏季五輪の招致をめざす東京都を視察するため国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員の一行がきょう来日する。

評価委員がIOCに提出する報告書は、開催地が決定する際に重要な資料となる。一昔前なら候補都市の間で、猛烈な接待合戦が繰り広げられたはずだ。もっとも、1998年に、米国ソルトレークシティー冬季五輪の招致で、IOC委員に金品が提供されたスキャンダルが発覚してから、過剰な接待はご法度となっている。

せめて昼食においしいものを食べてもらおうと思っても、10の国籍にわかれる委員全員の好みに合わせるのは難しい。制約のなかで、いかに評価委員の心をつかむか。迎える側の東京都や招致委員会は、悪戦苦闘しているようだ。

日本人の「もてなしの心」のもとをたどれば、茶の湯に行き着く。亭主は茶室に迎える客のために、庭を掃除し、道具を取り合わせ、季節の花を飾り、おいしいお茶をたてる。

安土・桃山時代に茶の湯を完成させた千利休が、極意として7カ条をあげたと伝えられる。「刻限は早めに」から「天気にても雨の用意」まで、当たり前のことばかり。評価委員に対しても、奇をてらわずに、「もてなしの心」を理解してもらうしかないようだ。【産経妙】
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DATE: 2009/04/13(月)   CATEGORY: ニュース
県議らが森田知事を告発へ
県議らが森田知事を告発へ=公選法違反容疑で−千葉

 森田健作千葉県知事が自民党の支部長を務めながら、「完全無所属」をアピールして知事選を戦ったなどとして、県議の一部と市民運動グループは11日、千葉市内で会合を開き、「森田健作氏を告発する会」(井村弘子代表)を発足させた。同会は15日に、森田氏を公職選挙法違反の疑いで千葉地検に告発するという。

 同会は、森田氏が自民党東京都衆議院選挙区第2支部の代表を務めている点を問題視。「票集め目的で完全無所属をうたい、県民をだました行為は相当悪質」としている。

2009/04/11 時事通信
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DATE: 2009/04/12(日)   CATEGORY: 社説
麻生VS小沢 なお2人とも厳しい
 攻守逆転の気配である。毎日新聞が実施した世論調査で、民主党の小沢一郎代表が衆院選までに党首を辞任すべきだと答えた人は72%に達した。対照的に、極端に低迷していた麻生内閣の支持率は8ポイント増の24%と復調傾向をみせた。

 政治資金規正法違反で公設秘書が起訴された小沢氏の続投を了承した民主党だが、依然として世論の風当たりが厳しい現実を突きつけた数字だ。このままで政権交代の展望が開けるか、疑問を抱かざるを得ない。

 しかし、麻生太郎首相に吹き始めた追い風も政権への本格評価とは言い難い。与野党が世論支持の受け皿となりきれない状況を浮き彫りにした調査結果である。

 衆院選を半年以内に控えた民主党には重い結果だ。設問がやや異なるとはいえ小沢氏の辞任が必要と考える人は、秘書逮捕直後の57%に比べてむしろ増えた。検察捜査のあり方など小沢氏秘書の立件をめぐり議論があることは事実だ。さりとて、西松建設のダミー団体からの巨額献金に関する小沢氏の説明にも国民の多くは納得していない。

 今回の調査では、次期衆院選で自民党よりも民主党に勝ってほしいと答えた人がなお上回っている。小沢氏は「必ず政権を取れると現時点で認識している」と言うが、むしろ自身の進退問題がそのアキレスけんとなりつつあるのが実態ではないか。

 党の自浄努力にしても、小沢氏が提起した企業・団体献金の全面禁止で合意したのは前進だが、実施時期をめぐる調整は難航している。それ以上に深刻なのは、国会審議を通じ衆院解散に追い込む迫力が衰え、攻勢が影を潜めたことだ。民主党は最近、与党からの国会での党首討論の打診を拒否した。これでは「どちらが首相にふさわしいか」で麻生首相への支持が小沢氏を上回り、逆転したこともやむを得まい。

 片や、一時は11%にまで沈んだ麻生内閣支持率は何とか末期的水準から浮上した。定額給付金を評価する人も2月調査より増え、北朝鮮のミサイル発射への対応も国民は評価している。民主党の混乱で国会運営も与党ペースとなり、余裕を取り戻した首相の最近の表情が状況の変化を物語る。

 ただ、依然として内閣不支持が半数以上を占めており、政権への信頼回復が軌道に乗ったとは言えない。衆院選で国民の信任を得ないままの政権運営には限界がある。

 首相が打ち出した総額15兆円もの追加経済対策に対し、民主党は修正案を示し対抗する構えだ。自民党内にも5月解散を促す声が出てきた。やはり速やかに衆院を解散し、どちらの案が的を射たものか、政権公約とともに国民に聞くべきである。

4/12 毎日新聞 社説
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DATE: 2009/04/12(日)   CATEGORY: 社説
リーダー不在の不幸 週のはじめに考える
 日本が劣化しつつあります。最近、そんな指摘をよく聞きます。リーダーが不在だからではありませんか。総選挙を前に、指導者像について考えます。

 この春の各企業の入社式では経営トップから新入社員にさまざまなメッセージが伝えられました。

 「この時期だからこそ飛躍の時に備えた種まきを」(ブラザー工業・小池利和社長)

 「技術は決してだませない。手を抜くと、必ずほころびが出る」(三菱重工・大宮英明社長)

 「一人でできることには限界がある。『自問自答』ではなく『自問他答』を」(富士通・野副州旦社長)

 ■尺度なき競争社会の果て

 「現在の非常事態がしばらく続くことを覚悟しなければ」と説くトヨタ自動車の渡辺捷昭社長はこう語ります。「トヨタのモノづくりの原点に戻り、低価格で良質な商品をタイムリーに提供する」

 世界大不況という苦境に立ち向かうことにもなる若者への掛け声は、財界リーダーたちのざんげや反省の言葉のようにも見えます。

 「次の時代への備えを怠ってこなかったか」「手抜きはなかったか」「人の意見、忠告に耳を傾けてきたか」「顧客中心主義を見失ってはいなかったか」

 今回の大不況は、もとはといえば米国の金融危機に端を発しています。日本はむしろ被害者だと言いたい人もいるでしょう。

 しかし、米国流の市場原理主義が大手を振り、拝金主義が支配する世の中になってしまいました。ルールや尺度のない競争の果てには何が待っていたのでしょうか。「貧困」と「社会の分断」です。

 今では年収二百万円以下の給与所得者が一千万人を超えました。経済協力開発機構(OECD)が発表した貧困率の統計によると、日本は先進国の中で米国についで二番目の「貧困大国」になりました。貧困率というのは「年収が全国民の年収の中央値の半分に満たない国民の割合」のことを指します。前年の日本は五位でした。

 格差が拡大し、社会組織が「勝ち組」と「負け組」に分断され、階層化により日本社会が持っていた徳性が壊されかかっています。徳性とは、勤勉、協調、努力、創意といった戦後の高度経済成長を支えた日本人の特質を指します。

 わずか二十年ほど前には「一億総中流社会」といわれた平等社会だったのに、あまりの激しい変化に驚かされます。この流れを決定付けたのは、一九九〇年代のバブル崩壊とその後に続く経済、政治・行政の「改革」です。

 ■傑出した政治家が出ない

 この改革が目指したのは、経済面では「官から民へ」の掛け声とともに「小さな政府」の実現と規制緩和の実施です。民間を主体とする競争の活性化でした。政治・行政面では、官僚支配を脱し、政治主導の実現がうたわれました。

 でも、規制緩和は、例えば「派遣切り」といった歪(ひず)みをもたらしました。強欲とも言える米国流の金融資本主義が破綻(はたん)し、そこから脱却を図るためばらまき型の「大きな政府」が今日の姿です。

 どうして予見できなかったのでしょう。いくつか要因が考えられますが、最大のものは各界でのリーダー不在ではありませんか。とりわけ政治家に傑出した人物を欠きました。戦国時代や明治維新など時代の転換期には優れた指導者が出ましたが、現代の混迷期には相応の人物が見当たりません。

 北朝鮮のミサイル発射問題の際でも何らかのパイプを通じて関係国首脳と連絡を取るという発想がなかったのでしょうか。危機の時こそ政治指導者の出番なのです。

 作家塩野七生さんが「ローマ人の物語4」で指導者に求められる五つの資質をこう書いています。

 「知性。説得力。肉体上の耐久力。自己抑制の能力。持続する意志。カエサルだけが、このすべてを持っていた」

 たしかに、これを全部備えている人は世界中を見渡してもほとんどいないでしょう。米国のオバマ大統領の顔が浮かびますが、真価を問われるのはこれからです。

 首相の麻生太郎さん、民主党代表の小沢一郎さんはどうでしょうか。漢字の読み間違い、違法献金事件など知性や説得力の面で二人とも首をかしげざるを得ないところが多分にあります。

 ■新しい仕組みとルールを

 歴史に学び、日本のあるべき姿への明確なビジョンを持ち、言葉を尽くして相手を説得し、ときに耐え、自分を抑え、国民とともにありながら自分の意志を貫く。

 日本は曲がり角に差しかかっています。同じ競争社会でも、人々が互いに助け合って生きていく新しい仕組みやルールをつくる時期ではありませんか。

 それを先導していくリーダーが今こそ必要です。

4/12 中日新聞 社説
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DATE: 2009/04/12(日)   CATEGORY: コラム
安保理の仕事【余録】
06年7月5日、北朝鮮は事前通告なしにミサイルを連続発射した。国連安全保障理事会では北朝鮮に対する決議案の文言をめぐり日米と中国などとの調整が難航し、英国などが修正案を出してきた。日本の国連代表部は修正案に乗る方向に傾いた。

しかし、東京には妥協の気配が見えず、代表部は焦りの色を濃くしていた。しばらくして「米国は降りる」との報が入り、代表部は「これで日本も妥協できる」と一斉にみんなの顔色が明るくなった。その日の午後、決議は満場一致で採択された。

当時、国連次席大使だった北岡伸一東大教授が経験の一こまを紹介している(「国連の政治力学」中公新書)。それから3年、安保理はまた北朝鮮問題で頭を悩ませている。日中首脳会談が11日行われたが、決議を求めていた日本は厳しい交渉を強いられているようだ。

安保理の仕事は「なんと言っても決議案(および議長声明)を作ることによって、国際社会の意思を明らかにすること」(北岡氏)という。しかし、国益がぶつかり合う場だから自国の主張を丸ごと通すのは難しい。外交力が試される局面である。

それにつけても、あれやこれやの理屈でミサイル発射の正当化を図る北朝鮮は、「理屈は後から貨車でついてくる」のたとえを地でいっているようにみえる。このフレーズは、かつて春日一幸元民社党委員長が使った。

結果を正当化する理屈はいくらでもつけられるという永田町的政治作法を指したものだ。何でも積める貨車は便利だ。だが、満載時と空車時の重量差が大きく常に脱線対策の考慮が必要という。“へ理屈”を積みすぎた北朝鮮の貨車はなおのこと危ない。【余録】
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DATE: 2009/04/12(日)   CATEGORY: コラム
レモン内閣【編集手帳】
レモンは果肉が傷んでいても外見は新鮮で、手に取ったくらいでは見抜けない。そのためだろう、経済学では見かけは立派だが中身の悪い欠陥品を「レモン」と呼ぶ。ちなみに外見で品質がわかるものは「ピーチ」だ。

経済学のテキストは欠陥中古車を例にとり「レモン市場」の行く末を説明する。客の多くは性能を見抜けず、ピカピカだが中身はポンコツの安物を買う。当然、故障が多く苦情が増え、やがて中古車市場そのものが衰退してしまう…。

焦げ付きそうな住宅融資を金融工学で有利な金融商品に変身させたサブプライムローン問題は典型だ。欧米の金融機関が損失を抱え、金融市場は危機に陥った。中身が隠された欠陥品は、やはり市場の天敵だった。

日本酒、ハマグリ、フグ、ウナギ…。和食のメニューではない。最近、材料や産地の偽装が発覚した「レモン」の仲間だ。近ごろの短命政権も見かけ倒しの点では大差ないかもしれない。

そんな「レモン内閣」は願い下げだが、自民党と民主党は、政治献金をめぐる疑惑でどちらもレモンのにおいがしてきた。おいしそうな「桃」しか食べたくないのに。【編集手帳】
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DATE: 2009/04/12(日)   CATEGORY: コラム
一本桜【天声人語】
染め上げると言うにはあまりに淡い色を連ねて、桜前線の北上はきょうはどのあたりか。陽気に誘われて、せんだって山梨県の神代(じんだい)桜を訪ねた。日本三大桜と呼ばれる一本だ。樹齢2千年ともいうエドヒガンの古木は、ちょうど満開の枝を空に広げていた。

周囲が12メートルもある幹は黒い巨岩を思わせる。瘤(こぶ)だらけで洞(うろ)をなし、節くれだっている。その貫禄(かんろく)は、残雪の南アルプスに向かって一歩も引かない。異形の塊から清楚(せいそ)な花が乱れ咲く様は、どこか妖(あや)しげな空気さえ漂わせていた。

桜の花は万人に愛(め)でられるが、幹もまた捨てがたい。「桜の画家」で知られる中島千波さんに、「花を描くというより幹を描く」とうかがったことがある。桜の表情は、花よりも幹に真骨頂があるのだという。

やはり三大桜の一つに樹齢1500年という岐阜の淡墨(うすずみ)桜がある。中島さんは初めて見て幹に圧倒された。「古代人がそこにいるような畏敬(いけい)の念を感じた」そうだ。以来、歳月を重ねた一本桜の肖像画を描く気構えで桜と向き合ってきた。

〈さくら花幾春かけて老いゆかん身に水流の音ひびくなり〉。小紙歌壇の選者馬場あき子さんの一首を思い出す。水流とは老樹のひそやかな鼓動だろうか。それとも、遠い過去から吸い上げる悠久の時の流れなのだろうか。いずれ、聞こうと心する耳にだけ響く音なのに違いない。

群生の桜は「見に行く」だが、有名でも無名でも一本桜には「会いに行く」と言うのがふさわしい。人、桜に会う。仲を取り持って、二度とはめぐらぬ今年の春がたけていく。【天声人語】
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