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DATE: 2008/01/07(月)   CATEGORY: コラム
「ダカール・ラリー」朝日新聞【天声人語】

「ダカール」という地名は高校生のころ、サンテグジュペリの小説『南方郵便機』で知った。『星の王子さま』の作者でもあるこのフランス人は、砂漠を実に美しく描く。翻訳の行間に、逃げ水の向こうで揺れる白い街を想像したものだ。

 

作中、サハラ砂漠を越えてくる郵便機の安否を気遣い、エンジン音に耳をすますくだりがある。今ならそれは、ラリー車が疾走してくる音だろうか。アフリカ西岸のこの街は、砂漠を走る「ダカール・ラリー(通称パリ・ダカ)」のゴールとして一躍有名になった。

 

世界で最も過酷といわれるそのラリーが、30回の節目の年に中止された。競技をねらったテロの恐れがあるためだ。もともと治安の定まらない地域である。コースの変更は過去にもあったが、中止は初めてという。

 

国際テロ組織アルカイダの一派が、フランスを標的に動きを強めているそうだ。危険に立ち向かう冒険ラリーも、テロ組織に暗躍されては冒険ではすまなくなる。

 

「冒険の扉に連れて行ってやろう。ただし、運命に挑戦する扉を開けるのは君だ」。それが、ラリーが始まったころの標語だった。近年は商業化が著しく、冒険精神は薄れたとも聞く。華々しさを増すイベントは、現地の人々の目には、どう映っていたのだろう。

 

『南方郵便機』の時代も、仏の植民地支配に背く人々で、この地は不穏だった。憎悪や敵意の温床は、冷めないままに残されたのだろうか。温床を取り除くことなしに砂上の冒険を享受するのは、もう難しくなったように思われる。

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