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DATE: 2008/07/05(土)   CATEGORY: コラム
美と平和の夢の国【余禄】

1878(明治11)年9月、英国の女性旅行家イザベラ・バードは北海道の噴火湾沿いに旅をした途中、有珠山近くで「有珠は美と平和の夢の国である」と書いている。そこにいたる山越えでは次のような場面もあった。

 

「長流(オシャル)川を越えて険しい坂道を登ると、頂上から非常に美しい湖らしきものが眺められる。小さな岬がいくつかあり、森のこんもりとしたのもあれば、岩だらけのもある。……小さな高台には黄色い屋根のアイヌの家が集まっている」(「日本奥地紀行」平凡社ライブラリー)。

 

さて見えたのは洞爺湖だったのか。バードはこの近辺の風景には「美しい」の言葉を惜しんではいない。そして北海道洞爺湖サミットにやってくる首脳らも、東に中島を浮かべた洞爺湖、西に噴火湾を望んで、きっと同じ言葉をもらすだろう。

 

だがテーブルで首脳を待ち構えるのは、温暖化対策、食糧・原油価格高騰とインフレ懸念など、相互に深くからみ合う地球規模の問題群である。主要8カ国はもちろん、中国やインドなど過去最多の22カ国もの首脳が集まるのもそのためだ。

 

振り返れば70年代の世界不況で、主要国間の政策協調の必要が痛感されて生まれたサミットだ。だが地球環境も、食糧も、エネルギーも、その限界点が切迫する中でのグローバル経済のコントロールは人類がいまだ経験したことのない課題だ。

 

「美と平和の夢の国」を山上から見渡すサミットでは、どうか首脳らには視線をできるだけ遠くに注いでほしい。任期切れや、支持率の低下に悩む首脳の多いのも悪いとは限らない。それで目先の利にとらわれず、文明史的な使命がよく見えてくるならばである。

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