岳道の時事放談ですよ~ん
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朝刊 周囲に耳傾け進化を
2017.04/24 (Mon)
<解説> 名古屋市長選は河村たかし氏が圧勝し、得票数、得票率とも四年前の前回を上回った。ただ、投票率は河村氏の四回の市長選で最も低く、同氏に投票したのは有権者の四人に一人にすぎない。例えてみれば、観客まばらな「河村劇場」だろう。「庶民革命」に期待したかつての熱気は冷めた。とはいえ、河村市政の継続が選択されたのは、この二期八年、市民に深刻に響く失政がなかったからだろう。気さくな人柄や、名古屋の広告塔としての顔が浸透していたといえる。相手陣営は市議会や市職員との衝突による混乱、それによる市政の停滞を突いたが、市民の目には既得権側の代弁に映り、市長交代の必要性を感じられなかった。
だが、河村氏が争点に据えた名古屋城天守閣の木造復元でも、本紙の世論調査で「投票の判断材料にする」との回答は三割。これまでの政策や手法が、すべて信任されたわけではない。
ぶれない姿勢や、独特の発想力という武器は、民意を追い風に対立軸をつくるけんか流や、積み上げのない思い付き施策と表裏一体でもある。
「地方から国を変える」ことにも熱心だが、それは東京や大阪との連携に執着することではない。いじめや不登校の子に対応するため、常勤カウンセラーを学校に配置する試みや、待機児童解消に向けた積極的な取り組みは、地味だが全国的な評価は高い。
総仕上げの三期目。「議会で与党が過半数ないから、何も進まん」「役人は市長じゃなく、議員を向いているから言うこと聞かん」。そんな現状へのぼやきはもう封印し、市民に受け入れられている「河村さん」流で。周囲に耳を傾け、知恵を寄せ合い、創りあげるリーダーへの進化を見せてほしい。
(社会部・岩崎健太朗)
中日新聞 2017年4月24日
