岳道の時事放談ですよ~ん
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【主張】中国GDPの拡大 成長演出より改革進めよ
2017.04/24 (Mon)
不安を拭えない経済の拡大である。1~3月期の中国の国内総生産(GDP)が前年同期比6・9%増となった。2期連続の拡大であり、年間目標の「6・5%前後」を上回る。数字の上では景気の回復基調を示している。
むろん昨年まで減速傾向が顕著だった中国経済が持ち直せば、日本を含む世界経済の追い風になり得る。問題は、それが内実を伴っているかだ。
成長を押し上げたのは、政府主導のインフラ投資や過熱気味の不動産開発だ。国際社会に約束する構造改革は、脇に追いやられた格好になっている。
投資主導経済が限界を来したからこそ、これを改め、消費主導の安定成長を目指したはずだ。現状はこれに逆行している。
秋の中国共産党大会に向けて、習近平指導部は権力基盤を強めたい。だが、強引に成長をかさ上げして実績を演出するようでは、持続的な成長など望めまい。
道路、橋、空港などのインフラ投資は23・5%も増えた。旺盛な需要で粗鋼生産も伸びている。ただ、中国は鉄鋼の過剰生産を解消するため、生産能力を5千万トン削減する目標を掲げている。それが揺らぐ懸念はないのか。
鉄に限らず、セメントなど経営不振の国有企業も息を吹き返しつつあるという。赤字を垂れ流しても倒産しない「ゾンビ企業」を淘汰(とうた)するのは構造改革の核心だが、それは遠のくのか。
また、投資に偏った政策運営は不動産バブルという副作用を招く。投機資金は不動産市場に集中し、3月の新築住宅価格は主要70都市の9割近くで上昇した。
投機抑制策を講じても追いつかないため、バブル崩壊や金融システム不安への懸念は消えない。李克強首相は「金融リスクを高度に警戒する」と訴えている。
対中貿易赤字を問題視する、トランプ米政権との関係も不確実性が高い。米中首脳会談で表立った対立は回避したが、不均衡是正に向けた「100日計画」で米側の圧力は強まるかもしれない。
トランプ氏は20日、中国を念頭に、鉄鋼の大量輸入が安全保障に及ぼす被害を調べる大統領令に署名した。中国政府の補助金やダンピング(不当廉売)に対処する姿勢を示したものだ。
習政権に、改革を後回しにする余裕はないということだろう。
産経新聞 2017.4.24
