戦後最長の回復軌道にあった景気が後退期へ入ったことがはっきりした。4〜6月の実質国内総生産(GDP)が、年率換算で2.4%減と4四半期ぶりのマイナス成長になった。
ずっと景気を支えてきた輸出が13四半期ぶりで減少に転じたほか、もう一本の柱だった設備投資もマイナス、個人消費も7四半期ぶりに減少した。主力打者やエースがそろってスランプに陥った野球チームのようだ。
もとより景気に浮き沈みはつきものだ。過熱すればどこかでブレーキがかかるし、低迷しても過剰在庫などが整理されればいずれは浮上する。循環するのが景気というものだ。
しかし今回は、単純に循環任せにはできない。構造的な問題が不振の背景にあり、心して取り組まないと長期化する恐れがある。
まず、最大の輸出先である米国の景気が、サブプライム問題をきっかけに長い後退局面に入った可能性が高い。とすると、日本の主力商品である自動車や電気製品も打撃を受ける。輸出が減れば、国内の設備投資も減速するという悪循環に陥る。
もうひとつの問題は資源の高騰だ。国際通貨基金(IMF)などによると、07年に日本から海外へ流出した所得は、世界最大の1965億ドル(約23兆円)に達した。原油などの輸入価格が高騰したのに、工業製品の輸出価格が上がらなかったためだ。
逆に、サウジアラビアなど中東13カ国への所得の流入は1571億ドルとなった。日本など工業国のもうけが資源国へ吸い取られた勘定になる。
米国は不振でも、資源国にはお金が余っている。そこへ日本製品を売り込んで取り戻すよう、企業は販路拡大の工夫や人材養成などに一段と力を入れなければならない。
輸出以外では内需、とりわけ個人消費に期待したいところだ。ところが、長く賃金が低迷しているなかで、原油高・穀物高の打撃を受けて、財布のヒモを固くし始めている。
一方で企業は、長期の好況で利益を膨らませてきた。法人企業統計では、全企業の経常利益は底だった98年の21兆円から、06年は54兆円へ拡大した。賃金を抑え非正規雇用を増やして人件費を削りつつ、株主配当や内部留保を手厚くしてきた結果である。
これでは消費がしぼむ。企業が利益をためてきたのは、不況への備えでもある。その備えを使い、雇用条件を改善して人材を育て、新たな成長の芽を見つけて投資する。逆風のときこそ企業など民間の実力が試される。
次の総選挙を見据え、与党は大型補正予算を組む方針で一致した。だが、過去の景気対策はどれも一時しのぎにしかならず、国債という重いツケを残したことを忘れてはならない。
8/14 朝日新聞 社説