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DATE: 2008/08/15(金)   CATEGORY: コラム
悲しい手紙【編集手帳】

「マサノリ キヨコ フタリヘ」という手紙に父は書いている。〈ヒトノオトウサンヲウラヤンデハイケマセンヨ〉。お父さんは神様になってお前たちを見守っているのだから、と。

 

特攻隊員の最後の言葉を収めた知覧特攻平和会館編「いつまでも、いつまでもお元気で」(草思社)の一編である。終戦の年5月に戦死した久野正信中佐29歳、子供たちはカタカナがやっと読める年ごろだろう。

 

数日前の新聞記事に目を落とす。東条英機元首相が終戦直前に綴(つづ)ったという手記に、国民を「無気魂」(=だらしない)と批判した一節があった。

 

〈オトウサンハ「マサノリ」「キヨコ」ノオウマニハナレマセン…〉。血を吐くように書き残した父の、おそらくは泣き腫らした目で幾度も読み返しただろう子の、手紙の形はとらずとも、父子と同じ悲しみに耐えた数限りない人々の、どこが「無気魂」か。そういう指導者のもとで遂行された戦争である。

 

うそか本当か、B29と聞いて「そんな軟らかい鉛筆があるの?」と尋ねる若い人もいると聞く。語り継がねばならない。悲しい手紙が二度と書かれることのないように。

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