傘寿を迎えたミッキーマウス【中日春秋】
アニメの不思議な縁(えにし)という気もするけれど、この三日が生誕八十年だった手塚治虫さんと同い歳(どし)、しかも同じ月の生まれということらしい。きのう、傘寿を迎えたミッキーマウス
誕生日とは、一九二八年に出演作(『蒸気船ウィリー』)が初めて米国で公開された日だ。それ以来、このキャラクターが変貌(へんぼう)を重ねていたということを、進化生物学者スティーブン・ジェイ・グールド博士の古いエッセーで初めて知った
何でも<初期のミッキーは手に負えない腕白者>で、行動は残酷気味でさえあった。それが、人気を得るにつれ温和化していく。外見もしかり。イラストを見れば、一九三〇年代、四〇年代後半、そして現在に近い感じの七〇年代後半と、容姿の変化は明瞭(めいりょう)だ
博士が測定してみると、ミッキーの頭は次第に体に対して大きくなり、目も大きくなり、頭蓋(ずがい)は拡大していた。赤ちゃんがいい例で、これらはみな<幼さを示す特徴>。そして、それは、子育てのために発達した反応として、人に<強い愛情を誘発する>特徴なのである
博士の書くように、ディズニーが、ただもっと愛らしくと追求して、ミッキーの手直しをするうち<無意識にこの生物学的原理を発見>していたのだとすれば、少し玄妙な話だ
人の工夫も突き詰めると、自然の摂理に重なる。成功する変革とはそうしたものなのかもしれない。【中日春秋】
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