文明の衝突【産経妙】
2010年、南シナ海の支配権をめぐって、中国がベトナムに侵攻し、ベトナムを支援する米国と開戦する。当初中立を宣言していた日本は、中国側につく。米国・欧州・ロシア・インド対中国・日本・イスラム諸国の世界大戦となり、欧露軍がシベリアから万里の長城を越えて、北京を総攻撃する。
世界中で物議を醸した『文明の衝突』(集英社)で紹介されているシナリオだ。著者の米国の政治学者、サミュエル・ハンチントンさん(81)の訃報(ふほう)が、このほど伝えられた。“大戦勃発(ぼっぱつ)”を再来年にひかえて、シナリオを書き直す気はないのか、ぜひ聞いてみたかった。
もっとも、冷戦終結後は、イデオロギーの対立に代わって、宗教や文化による対立が、世界の秩序を揺るがすようになるという持論には、ますます自信を深めていたはずだ。半世紀を超えるパレスチナ紛争は、「文明の衝突」の最たる例といっていい。
今回のイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの大規模空爆の背景には、来年2月に行われる総選挙があるという。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスによるロケット弾攻撃に、連立与党がこのまま手をこまねいていれば、強硬派の野党に政権を奪われる可能性が強まるからだ。
一方、パレスチナ内部でも反イスラエル感情の高まりは、穏健派の弱体化を招くことになる。ハンチントンさんによれば、「文明の衝突」の過程で、穏健派が過激派に勢力を奪われるのは必然だ。ただその状態も長くは続かない。
「両側で穏健派がまた勢力を盛り返し、暴力の『無意味さ』を指摘して、交渉による解決を目指すことになるだろう」という。そこへ行き着くまでに、どれほどの血が流されなければならないのか。【産経妙】
| ホーム |