平成の20年【余禄】
「修文」「正化」といっても今や覚えている方も少ないだろう。今の年号「平成」が決まったときに、ともに候補として挙げられた元号案だ。3案はいずれも「平和」を意味する。それが平成に決まったのは「最も平易でストレート」だからという。
昭和天皇が亡くなり、天皇陛下が即位されてきょうで20年を迎えた。ある年代以上の方ならば、当時の小渕恵三官房長官が記者会見で「平成」と大きく墨で書いた紙を掲げるテレビ映像が目に焼き付いているに違いない。「昭和」が「平成」へと変わったのは、翌8日からだった。
「大いなる世界の動き始まりぬ父君のあと継ぎし時しも」は平成12(00)年の歌会始の天皇陛下のお歌だ。そういえば20年前は、ベルリンの壁が崩壊して冷戦が終結し、バブル経済で史上最高値をつけた東証の株価が下落に転じた年だった。
二つの古典の記述から内外、天地ともに平和であるよう願う「平成」である。むろんうれしい事も多かった20年間だが、どうしても内に経済の混乱、外にテロや戦争が思い浮かぶ。大いなる世界の変動は今も先行き不透明のまま続いている。
この間の震災はじめ天地の災害の惨禍も忘れられない。「嘆(なげ)かひし後(のち)の眼(まなこ)の冴(さ)えざえと澄みゐし人ら何方(いづかた)に住む」は阪神大震災の3年後の皇后陛下のお歌である。災害を通し生まれた列島に住む者同士の心のきずなは時代の記憶に刻まれた。
そして世界不況に直面した今日である。だが積み重なった過去を一つ一つ思い起こせば、苦境を乗り切り、平成を願う心の支えも案外近くに見つかろう。天皇陛下のお歌だ。「戦(いくさ)なき世を歩みきて思ひ出づかの難(かた)き日を生きし人々」。【余禄】
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