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DATE: 2009/01/11(日)   CATEGORY: コラム
きょうは鏡開き【天声人語】

正月気分は足早に去り、きょうが鏡開きという地方が多い。供えていた餅は汁粉や雑煮で食すか、揚げて大根おろしで味わう手もあるそうだ。〈鏡餅開く木槌(きづち)の音高く〉谷口佳寿。

 

重ね餅の解体を、割るとか砕くとせず、開くというところに日本語の優しさを思う。幸せを願っての行事だから、呼び名ひとつにも縁起を担ぐ。もっとも、昨今は家庭用に小さく密封されたパック餅が出回り、開くという表現が妙にしっくりくる。

 

食す/味わう、割る/開く……。変幻自在の動詞は便利だが、曲者でもある。似たような仲間が多く控え、使い手の意を体して都合よく入れ替わる。与野党がもめている定額「給付」金も一例だろう。

 

その名に与党が組み込んだ給するという字には、目上から与える意味がある。ありがたくいただきます、という反応を見込んでいたに違いない。ばらまくという野党の言い換えはさておき、納税者が見えていれば、還(かえ)すか戻すを使っていたはずだ。

 

国会序盤の論戦を動詞ひとつで表せば、質(ただ)すでも答えるでもなく、すれ違うだった。質疑への罵声(ばせい)、答弁への怒号。ともに当意即妙の芸には遠い。のらりくらりの麻生節といい、永田町の冬景色は一段と寒い。

 

神仏にすがりたくもなる。三が日、主な神社仏閣への人出は計1億人に迫り、統計が残る74年以降の最多となった。秋田県にかほ市に伝わる餅占いでは「100年に一度」の大きなひび割れが現れたそうだ。こうなれば、凶兆さえも奮起の糧にしたい。奮い起(た)つと動詞で書けば、少しばかり元気が増す。【天声人語】

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