いい物を作ることで農村は強くなる【春秋】
シャンパンボトルの封を切りコルク栓をゆっくりと抜く。ポンという音と共にあふれたのは泡でも酒でもなく、焙煎(ばいせん)直後のコーヒー豆の豊かな香り。大手コーヒー会社役員を50歳過ぎで辞めた川島良彰さんが、一風変わったコーヒー豆の会員制販売を始めた。
伊達や見栄(みえ)ではない。農園開発に長年携わった経験を生かし、パナマなど4カ国で畑や樹の選定から摘む日、洗浄法まできめ細かく指導した。究極のコーヒー体験を届けるため関心は最後の包装に至る。焙煎豆の香りを家でもっと楽しめるように、たどり着いた結論が炭酸ガスの圧に耐えるシャンパン瓶だった。
世界のコーヒー豆の相場は、1990年代に投機資金の流入で暴騰し、その後2001年には生産増による供給過剰で大暴落した。川島さんは消えていく農園を目の当たりにする。作り手、売り手、飲む人がうまく共存でき、自然環境の保護にもつながる仕組みはないか。模索が始まった。
良い豆をじかに調達し説明付きで売るのもその一環だ。援助や補助金より、技術を磨き、いい物を作ることで農村は強くなると考える。価格は1セット10キロで30万円超。景気の急な落ち込みで、独立した2年前の想定より厳しい船出となった。コーヒー豆で生産者と消費者を直接結びたい。川島さんの挑戦が続く。【春秋】
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